2020年1月6日月曜日

すべてに洗練されたけれども、改善しない燃費よ。愛しのスバルWRX。


新型スバルWRXが愛車として入れ替わって、2週間ほどが過ぎた。距離も500km弱乗っただろうか。まだまだこれかいろいろ知ることになると思うけれども、ここまでに理解できたこの車の個性も多い。
ここのところ愛車ネタばかりで申し訳ないけれども、古臭い流行語で言えば「マイブーム」ということでお許しいただきたい。

唯一にして最大の欠点は燃費が芳しくないことだと思う。街中(アップダウンは多いものの、信号などによるストップ&ゴーは少ないはず)中心だと8km/lに及ばない。2Lターボで1.5トンのクルマだから、けして大いに期待していたわけではないけれども、ほぼ進化なしの結果だろう。1996年からこのWRX系のEJ20エンジンを積む車に、これで4台乗り継いできたけれども、ほとんど燃費に関しては改善されていないと思う。たぶんそれは、スバルがこのエンジンをリスト落ちさせざるを得ない最大の理由ではないだろうかと推察する。
一方で歴代WRXと比べて、良くなったところもたくさんある。EJ20エンジンで言えば、低回転からもりもりパワーが出ている。ま、それも燃費向上に至らない原因の一つだと思うが、もともと苦手だった低回転域の力強さは格段に良くなった。実のところ自分が手に入れた最初のWRX1996年製)でさえ、2400回転くらいで加速に鞭を入れても(つまりアクセルペダルを思いっきり踏み込んでも)、本来の力強さは感じられなかった。3200回転くらいから上では、突き抜けるほどの力強さがあって、上までストレスなく回ってくれるエンジンではあったけれども、シフトチェンジを横着にやると、全然早い車ではなかった。でも、現行車は違う。2400回転あれば、満足できる加速フィールが得られる。たまたま当家で所有しているBMWの直6エンジンのフィールにちょっぴり近い。3Lクラスのトルクが、低回転からついてきているのは嬉しい。
さらに、回転フィールそのものが、とても緻密で滑らかなことも記載したい。S207S208)やタイプRAのように、ピストン類の計量によるバランス取りはしていない、従来通りの308馬力エンジンだけれどもメカとしての精度の良さがありありと違う。これまたBMWの直6的だと感じてしまう。
乗り心地も悪くない(もちろん素晴らしい快適さとは言えないですけどね)。ガチガチって言うほどは締め上げられていなくて、充分ストロークする設定は乗員にとって居心地のいい落としどころだ。もちろんボヨヨンと揺れが収まらないようなだらしなさは皆無だ。もともと固め(明らかに固め)のサス設定でやってきたWRXでも、ここまでしなやかにできるんだと感心してしまった。結果ハンドリングが気持ちいい。狙った通りのラインに容易に乗せられるし、今の北海道ではカウンターの戻しも簡単に決まる。もちろん自慢の全輪駆動は、この車のイチオシの秀逸さだ。

インパネも見やすくなった。ま、これは旧型がひどすぎたから、進化してもらわないと困る。旧型では暗すぎて、夜間以外はとにかく見づらいクルマだったが、その心配はなくなっていた。ブーストメーターがアナログ風のデジタルメーターで付いているが、はっきり言って不要だと思う(コントロール下にはないしね)。むしろ油温計とかあった方がまだ使える(見る機会が増える)かな。細かいことを言いだすと、やや個人的な趣味にもなるのでこれ以上のことは記さないが、全般に見やすくなったのは歓迎できる。
それから、ボディシルエットもバランスの取れた悪くないスタイルを与えられた。歴代WRX史上いちばんスタイルのいい車ではないだろうか(ちょっと自画自賛か?)。二世代前くらいのBMW3に似ている。

とここまでおおむね絶賛してしまったが、今少し気になっている車はマツダ3だ。このところ(この10年くらい)マツダがリリースする車は、完成度が高い。特にここ数年では、明らかにプレミアムカーに舵を切っている(プライスもそれを裏付けている)。
マツダ3にはスバルの様な超絶かっとびエンジンの設定がないが、ボディシルエットにも内装の質感にも、高級感があふれる。いでたちの美しさに、オーラが出てきていると思う。エンジンだって2Lスーパーチャージャーで180馬力に乗せている(ターボじゃないところに上質感があると思う)。パワーだけではない、燃焼効率の良さの追及も、自動車業界をリードしている。大メーカーとは言えないマツダは、とっくに電動化に関しては諦めているが、そのリソースを現状のエンジン(ディーゼル含む)の燃焼効率の極限追及につぎ込んでいる。そういったあれこれを勘案するとWRXのベースモデルたるインプレッサに比べたら、マツダ3はプレミアムに対する本気度では勝っている。スバルには類まれな水平対向エンジンがあるし、無敵の4駆もある(これらを左右に綺麗に対象に配置し、低重心でクルマを駆動させている)。持ち駒的にはスバルがプレミアムカーの資質足りうるアイテムを多く有しているけれども、マツダのブランド力確立に対する執念にはわずかに劣っているのではないだろうか・・・。マツダは古くは悪くない車を(めちゃくちゃ良くもないけれども)、低い価格で(値引き幅を大きくして)売りさばくスタイルでやってきたが、今のマツダにはその呪縛はもうない。好き嫌いが無いとは言えないが、今のマツダ車を支えるシルエット(鼓動デザイン)には、マツダの美しいデザインに賭ける強い意志が宿っている。

北米で大成功を収め、SUV人気に沸くスバルは、次世代への準備がちょっぴり遅れているってことはないだろうか?スバルがプレミアムブランドとなって、手が届かない車だけを供給する作り手になって欲しいとは思わないけれども、マツダの見せる情熱は、ちょっぴりうらやましかったりする。



今までに比べたら少し綺麗なシルエットを与えられたWRXに乗りながら、ふとマツダ3のことを思い出してしまった。マツダ3が少し長めに割り込んだけれども、最後のEJ20マシンを手に入れた喜びは何物にも代えがたい。なるべく長い間このエンジンを愛用したい、そう強く感じさせるだけの魅力がEJ20にはある。