もう1か月ちょっと前のこと、久しぶりに映画を見に行った。アニメーション物で「駒田蒸留所へようこそ」という作品だ。ストーリーは震災を乗り越えて、オリジナルのモルトウィスキーづくりに情熱を傾けるオーナー家の末裔(長女)を主人公にした、ビジネス・サクセス・ストーリーだ。
作品は比較的淡々と語られ、うまく起承転結の展開に乗せてあって見やすかった。でも、ややあっさりとした内容で、強く感情を揺さぶるようなところもなかった点が、ちょっと物足りなくもあった。
さて、こういう映画を見ると、往々にしてそのストーリーの核となるものに自分も触れたくなることがある。今回のそれは、紛れもなく”ウィスキー”だ。普段はお酒を飲むと言えばほぼ100%ワインだし、ごくたまに新鮮な魚介が手に入ると日本酒を開けることがあるくらいなのだが、やはりウィスキーを飲みたくなるから映画の力は大きい♬
ウチのお酒の置き場を探し回ると、バランタイン(ファイネスト(一番ベーシックな奴))と、もうずっと昔に出かけたサントリーの蒸留所で買った白州東蒸留所8年の2種類が残っていた。白秋はもう100mlくらいしか残っていない・・・。
タンブラーっぽいグラスもどうにか見つけてきて、オンザロックで2種類を飲んでみる。どちらも芳醇でとてもおいしい!ウィスキーって、こんなに美味しいんだ・・・なんて、相当映画に毒されてる分を差し引いても、たまにはウィスキーもいいな、と感じた。特に白州の複雑な味わいは、とても美味しい。
翌日町内の酒屋さんに行って、いつもは見ない”ウィスキー”のコーナーを物色した。ここ2~3年(もっとかな?)国産(サントリーやニッカ)のウィスキーが高騰していることは何となく知っていたが、実際にプライスタグを見て驚いた。でもって、サントリーの看板商品「山崎」や「白州」は展示なし。聞けば”値段はいくらでもいいからって言っても、入手できないんですよ”と・・・。ぐるっと見回して、ニッカの「余市」を購入することに。6千円でわずかにお釣りがくる価格設定は、相場的には良心的だが、ニッカの希望小売価格は4千5百円だ・・・。一方、かって高嶺の花だったスコッチウィスキーは、信じられないくらいに廉価になっていた。ウチにあったバランタインファイネストは1,500円もしないし、学生時代に憧れだったジョニーウォーカーの黒ラベルでさえ3,000円で手に入る。ニッカの余市が倍の価格だと思うと逡巡してしまうが、映画を見た影響で国産のモルトウィスキーに魅かれた・・・。
その2週間後くらいに、隣町(上富良野町)の大型スーパーでサントリーのグレインウィスキー「知多」を見つけて、これまた買ってしまう(映画の影響は実に大きい)。3,980円(税別)の売価は、サントリーの希望小売価格(4千円)とほぼ同じ。国産ウィスキー入手困難な中で、けっこう良心的な値段だ。
ところで、いったいどうしてこんなに国産ウィスキーが品薄&高騰しているんだろう?サントリーのシングルモルト”山崎”は、ノンヴィンテージ物でさえ、希望小売価格の3倍を超えるプライスタグが、ネット通販でも普通にぶら下がっている。こういう疑問も、ネット全盛の今は情報入手が可能だ。興味本位で調べてみると、面白いことがわかる。美瑛に移住する前、会社勤めしていた僕の仕事は商品の生産管理だった。ちょっと小難しい響きがしないでもないが、要は需要に合わせて商品供給するために(作りすぎず、足りなくもない範囲で)、生産計画を練るポジションだ。おおむね半年先の需要を見通しながら、購買部門にパーツの入手などの情報提供をし、詳細のスケジュールは2か月前に確定させて行く(もちろんその後も微調整は入る)。なのでいつも頭の中は2~3か月先読みしていてせわしない。真夏に晩秋のことを思いながら計画を組む作業は、ちょっと気ぜわしいし世間とはズレた感覚だ。まぁデパートのショウウィンドウを見れば、同じような時間感覚で飾られていて、思わず笑ってしまったけれども・・・。で、ウィスキーに話を戻すと、こちらは10年先の需要を見込まないといけない。マッサンの大ブレークを想定して生産計画を組むことは事実上不可能だし、裏を返せば当たらなくても仕方がないとも言える。そう思うと、きっと今は増産に転じているはずだから、今の供給不足と高騰は、2030年ごろには解消すると予想してみる。