冬が去って春が迫る3月下旬、美瑛の数少ない友人が”ウトロに出かけよう”と誘ってくれたのを機に、初めて知床に行ってみた。なんでも知床には素晴らしい宿泊施設があり、特に食事の提供手法は独特なスタイルで、ものすごく美味しいという。それは僕にとってはこの上ない魅力に映り、即座に行くことにしたのだった。
もうひとつ、学生時代に学友が当時のウトロに行って写真をたくさん撮ってきて見せてもらった記憶があり、あの時写真を見ながらウトロに抱いた憧憬もわずかに残っていたこともあって、ウトロに行ってみたいという気持ちが後押しした。
3月23日、行き慣れた道を通って愛別へ抜け、そこから高速道路を使って遠軽へ。遠軽方面へは時折出かける。丸瀬布に行ったり、遠軽を抜けてサロマ湖畔で魚介類を買い求めたり・・・。
今回は遠軽で高速を降り(この高速、無料なのがありがたい。ちょっと路面はところどころ荒れているけどね)、端野⇒美幌⇒網走⇒斜里⇒ウトロへと向かった。斜里を抜けてウトロが近づくと、国道334号線は海岸線を通る。そこで思わず大声が出てしまった。なにしろ海面は流氷に覆われていたのだ。67歳にもなって、しかも北海道に移住して丸19年もたつというのに、流氷を見るのは初めてのこと。何と言えばいいのか、テレビで見るものではあるけれども、実際に自分の目で観る、ということを考えもしなかった。それは例えば極北の地のオーロラのように、肉眼で見るにはあまりに稀有な現象のような気がしていたからだと思う。
目の前に広がる流氷の大海原は、これぞ北国北海道の海、というにふさわしい、雄大で凛とした空気感があって、そのくせなぜか豊かさも感じさせた。聞けば流氷は、たくさんのプランクトンを運び、カニをはじめ北の海の幸を、おいしくしてくれる源だとも・・・。海面が凍って寒々しい光景かというと、なぜか海の豊かさを彷彿とさせる不思議な景色だ。ゆっくりと静かに揺れ、いつまでも見飽きない本当に不思議な光景を、ちょっと迷惑駐車になったかなぁ・・・と気にしつつも、いつまでも見ていたかった。
ウトロ市街地を少し超えて、知床自然館に寄り、30分ほどの映画(知床の自然の成り立ちなどを紹介)を見て(さすが世界遺産!)また市街地に戻って宿にチェック・インした。普段あまり期待を持たせるようなことは言わない友人が、”今宵の夕食は、あっと驚く絶品の数々を楽しめる。できるだけたくさんの料理を楽しむために、少し長い時間夕食に充てよう”と言う。
少し早い15時半にチェック・インしたのは「北こぶし」という宿だ。ウトロでは老舗の宿泊施設で、もともとは桑島旅館という名前で1960年の開業。その後知床グランドホテル、さらに北こぶしホテル&リゾートと名を変えて今に至っている。客室数149室の知床で一番規模の大きなホテルだ。友人は、夕食時間のスタートを一番早い17:30に指定。早く行って、遅くまで楽しむ作戦だと言う。彼が食にこだわっているのは知っているが、ここまで入れ込むのも初めての事。少なからず期待が膨らんだ。部屋に案内され(お部屋は普通のホテルの客室)、まずは温泉に。そして部屋に戻って4時半。眼前のオホーツク海にゆっくり傾く夕陽を見ながらいろいろな話をするうちに、あっという間に17:20に。満を持してダイニングへ向かった。
ダイニングに行くと、LIFE Tableと命名された夕食のスタイルは、鳴り物入りの豪華なビュッフェと言うよりは、セミオーダーの直前調理スタイルと言った方がしっくりくるサーヴ方式。おおむね半分ほどはいわゆるバイキングで、用意されたあれこれを好きなようにチョイスするのだが、準メインとメインになるお皿は、自分が欲しいお皿(見本)のコーナーに行ってオーダーすると、目の前で調理してくれるというもの。もちろん調理時間があまりに長くならないように、例えばローストビーフであれば好きなだけ切り分けて、ソースや付き合わせと共に綺麗に盛り付けてくれる。ソテーしたシャケを特製ソースと共に盛り付けてくれるお皿も美味しかったし、一番うなったのは牡蠣とホタテ(と野菜類の)天ぷらの盛り合わせだ。希望した天だねを目の前で揚げてもらえるなんて、ちょっとした贅沢だ!美味しいメニューがたくさんあって、パスタさえも食べずにお腹のスペースを温存すると言う作戦で、どうにかめぼしいお皿を制覇できた。
感心したのはドリンク類がどれも無料なこと(初期費用に織り込み済み)。アルコール類をそれほど飲まない人には割高に感じるかもしれないが、ワインはルイ・ジャド社のクーバン・デ・ジャコバンが供されており、いわば飲み放題のワインとしては、望むべくもないいいワインだ(もちろん、白も赤もしっかり飲みました)。せっかくなのでデザートにも手を出し、最後はコーヒーで締める。のど元まで美味しいが詰まった体をやっとの思いで引きずって、部屋に戻った。風呂好きの友人も、この日ばかりは食後のお風呂に行くことも叶わず、ふたりとも短時間のまどろみの後、眠りに落ちてしまった。
翌朝、まだ流氷がぎっしり岸に迫っている大パノラマに触れ、成り行きで網走から流氷観光船「オーロラ」に乗ることに。以前より流氷にそんなに熱い思いを抱いていたわけではないのだけど、大海原を覆いつくす流氷群をもっと間近に見たいと思った。オーロラ号は、乗船率は半分程度で、混んではいなかった。流氷のシーズンも終わりが近く(運航は3月末まで)、そろそろ観光客の流れも引き始めているようだった。
オーロラ号の遊覧時間は1時間ちょうど。岸を離れほどなく流氷群の中を進む。間近に見る流氷は岸から見るよりもずっと大きく、仲には10m四方もあろうか、というサイズのものも。この上にアザラシやシロクマが居たらさぞ絵になっただろうなぁと思ったが、さすがにカモメなどの鳥類だけしか見られなかった。
船酔いしがちな僕が、結構な振動と共に進む流氷観光船に1時間も揺られていたのだけれども、全然その心配はなかった。流氷の中をぐいぐい進むオーロラに感心して、あっという間の1時間だった。願わくば、来季もこんな光景を見に、ぜひオーロラ号に乗りに来ようと思ったのだった。





0 件のコメント:
コメントを投稿