雪が消えて春になる季節というのは、遍くだれにとってもいとおしい季節だ。もちろん僕自身にとっても・・・。ではあるけど、ちょっぴり事情が異なる部分もある。というのは、美瑛のような北海道のローカルな地で、宿屋をやりながら暮らしているから、今の3月から4月はちょっぴり特別な季節だ。
何が特別かと言えば、それは大きく分けると2つになる。ひとつは今が1年を通して一番の閑散期だということ。閑散期と言えば11月中旬から12月初旬というのもそうだけれども、今の方がちょっと期間が長い。
開業した当時は、この閑散期が恨めしくもあった。何しろ開業準備でなけなしの資金をほとんど使い果たしてしまっていたので、お客様のいない暮らしは生活するためのお金がない日々に直結していた。どうやってゴールデンウィークまで繋ぐのか、けっこう辛い2か月近くを過ごしたのは、開業後3年間くらいはあったと記憶する。
今は恨めしくはなくて、むしろ楽しい・・・。幸い宿屋としての経営は開業時よりはマシになって、なんとか冬までに閑散期を越えられるだけの体力がついてきたからだ。本当にありがたいことだと思う。
お客様をお迎えしているときには、小さな隙間時間を見つけてあれもやる、これもやるとがんばらないと、やらなくちゃいけないことが、零れ落ちて行ってしまう。それがこの閑散期になれば週休4日、5日になるので、さぞ、あれこれとたまった残務が片付けられるはずなのだが、週休5日になればなったなりの時間の無駄遣いが災いして、遅々と片付けられない自分がいる。さらに、そんなのんきでちょっぴりだらしのない暮らしぶりが許されるのも今ならではだ。こうして変な時間(ただいま午前4時)にPCに向かうことができるのも、今の時期のお楽しみだ。
もうひとつの特別感は、1年の準備の大半を今やらなくちゃいけない、という相反する部分。4月も末になると、お客様をお迎えする日が多くなって、普通の(というか毎日がお仕事の)日々が続く。こうなると、遠出はできないし、まとまった時間をかけて庭の整理をやったり、websiteを作りこんだり、宿の中のレイアウトを変更したりは事実上できない。それは「今やる」べきことで、繁忙期にはできないことでもある。
もう10シーズンもやっているわけだから、多少は勝手がわかってきたものの、僕の性格上なかなかシステマチックにできないところは大反省点だ・・・。とにかく、1年の計は元旦にあり、じゃなくてこの3月4月の閑散期にあり、なのだ。
決まった「やること」もある。冬の外用の道具(おもに雪を片付ける色々な道具)をしまって、自転車を物置小屋から出してくる。1年分の薪割をやる。庭に花を植える。などなど・・・。本当はやるべきことを書き出して網羅した方がいいのだけれども、ついつい目先のことをやろうとするうちに、効率悪く時間だけが過ぎてゆく。
やることが決まっていること、をなんとなくやりながら、時間切れとなってシーズンに突入してしまうと(たいていはこのパターンだ)、繁忙期に「これを準備しておけばよかったのに!」にたくさんぶつかる。
今の閑散期は、まぎれもなく今年1年の準備期間(であって、今を逃すとそのチャンスはない)。だから妙に気持ちが揺れる。あれこれと気分的にあっちこっちに気が取られる(気が散る)。閑散期をのんびり過ごして、その贅沢な時間の浪費を「今しかできないなぁ」と悦に入る自分と、今年1年の準備をしなくちゃ、と焦る自分・・・。
そうだ、とりあえず温泉に行こう。湯浴みして、あれこれ妄想を膨らませたら、何か見えてくるかもしれない・・・。そんなわけないかもしれないけど。
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