2013年12月5日木曜日

大統領の料理人_シアター・キノ

この秋、2本目の映画を札幌まで見に出かけました。フランスのミッテラン大統領のシェフを務めた女性シェフのストーリー。この映画はいわゆるロードショー のような全国的な上映をされず、数少ない本数が都会を中心に15ほどの映画館で上映されたにすぎません。北海道では唯一札幌で、シアター・キノと言う映画 館で上映されました。フェリーで帰省することになった先日11日に、札幌に寄ってこの映画を見ていくことにしました。
ストーリーは、南極観測隊の フランスの基地とパリのエリゼ宮の厨房とで交互に展開されていきます。エリゼ宮に関する部分は、ミッテラン大統領の個人的な希望で公務の晩餐会などのレセ プション以外の食事を供してくれるシェフを募ったところ、ジョエル・ロブションの推薦を受けた片田舎の女性シェフ、オルタンスが黒塗りの車で招聘されると ころからスタートです。

http://daitouryo-chef.gaga.ne.jp/

エリゼ宮の主厨房と、個人用の小ぶりな厨房で繰り広げられる政治的な綱引きの中、次々に繰り出される美味しそうな料理の数々。もっとも「晴れ」ではないときに供される食事だけに派手さや華やかさはやや抑え気味ではありますが、郷土色豊かな滋味あふれるお皿のあれこれは、映像から温かさや香りがほとばしるかのような臨場感いっぱいに展開していきます。
シェフの気がかりは、自身の作る料理が果たしてミッテラン大統領に美味しく食べてもらえているかということ。多忙極める大統領に直接聞くことも叶わぬまま、それでも戻って来るお皿を見ながら少しずつ自信をつけていくシェフ。そして最初は疑問視していたフロア責任者たちが、次第に協力をしてくれるような変化。さらには突然訪れる大統領との遭遇。田舎からやってきた女性シェフがあれこれと制約を受けながら大統領お気に入りの専属シェフになって行く過程を、その素晴らしい料理群を前面に淡々と語られて行きます。

一方場面が変わって南極におけるシェフは、肩の力が抜け、自分を前面に出したのびやかな日々が描かれています。
2年少しをエリゼ宮で必死に働いたシェフは、結局主厨房との争いや大統領の健康的な理由から課されるたくさんの制約、大統領以外の多くの官邸スタッフの要望などに疲れて辞表を出してしまうのです。そして選んだ次なる行先が南極でした。どうしてエリゼ宮から南極なのか・・・。まぁそれは映画を見てのお楽しみということにしますが、シェフの飽くなき「美味しい食事・美味しい食材」へと繋がる思いが滲むような理由だったのです。

この映画はあくまでもタイトル通りに大統領の個人的な料理人を務めた女性シェフの物語ですが、その一方で美味しいものの持つ「力」は素晴らしいものだということも強く訴えてきます。それはもちろん南極の基地でも同じこと。大統領も南極の基地の面々も彼女の作る美味しいお皿に魅了され、そして彼女を大好きになって行きます。
なお、このストーリーのモデルとなったのはダニエル・デルプシュという女性で、まさに大統領の料理人、南極観測基地のシェフ、そしてニュージーランドでトリュフの栽培などを手掛けた、食に情熱あふれる人です。

ひるがえって僕自身のことを書きますと、少し料理の幅を広げたいと思っていたところです。できれば正式な料理学校の指導を受けて、一から作りたいものに向かい合ってみたいと感じていた矢先だったのです。もっとも料理を習うには、それなりの費用もかかるわけで躊躇する自分もいないわけではありません・・・。でも、この映画を見て、やっぱり思い切ってやってみよう!と言う気持ちになりました。美味しいもの、美味しい料理の持つ力を、もっと引き出してみたい・・・。そんな思いが具体的な目標になったきっかけを作ってくれる映画になりました。

追記:
写真1枚目、札幌狸小路の「シアター・キノ」
写真2枚目、欧風料理を食べたら抜群の味わいのオーベルジュ「白馬ユキモク」
写真3枚目、パリのパン世界選手権でトップ3常連の成瀬氏のパン屋「トランブルー」

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