NHKの「プロフェッショナル」という番組が好きです。毎回なんていうのか仕事バカみたいな人が出てくる。超一流の技術者、医師、スポーツ選手、料理人などなど、その道を極めた人たちの素顔に触れることができる。ある面すがすがしいほどに、愚直に几帳面に、そしてクソ真面目にその「道」に突き進む人を身近に感じることができます。
もうひとつ好きな番組が、テレビ東京の「カンブリア宮殿」。こちらは基本的に経営者が登場します。大企業のトップも取り上げられるけれども、知る人ぞ知る地方の優良企業の社長が紹介されると、目からうろこではないけれどもすごく感激してしまうことが多い。
先週が千葉県のパンのチェーン店「ピーターパン」で、今週(昨日)は静岡県の和洋菓子店「たこ満」だった。聞いたこともない会社だし、実はたいして期待もしないで見始めるのだけれども、番組の冒頭からぐいぐいと惹き込まれてしまう。パンとかお菓子は、ある面どこにでもある食べ物で、そこに個性や特別な価値を盛り込むことはそう簡単ではないと思う。仮に少々うまく行ったとしても、すぐにライバル店に真似られたり、消費者から飽きられてしまうことだって多い。
そんな言ってみればどこにでもある商材で、どこにも負けない経営を粛々と経営している社長さんの語りは、実に奥が深い。と同時にきわめて当たり前のことをちゃんとやっている、と感じる。当たり前のことって何だ?といつも思うわけだけれども、あらためて当たり前の難しいことにも気づかされる。
こういった一見ライバルひしめき合う商材でびくともしない経営を成し遂げている会社の経営者は、その当たり前がシンプルにバックボーンに息づいている。それは
・社員の幸せな暮らしがあって、はじめて会社が成り立つ。
・お客様が喜んでくれること、それだけでいい。
・できることを精一杯。
の3本柱のようなのだ。そこには利益追求や、先鋭的なコストダウンは影をひそめ、はたまたブランド形成さえ無縁と感じるような会社経営がある。もちろん徹底したコストダウンはやっているのだと思う。でも、それは最優先事項ではもちろんないし、目標設定された原価低減活動でもないのだろう。おそらくは丁寧に育てられた社員たちから自発的に(であるためにとても効果的に)なされる、当たり前のコストダウンなのだろう。
経営者の生い立ちとして、猛烈社員・若手やる気満々社長の躓きの後、はたと行きつく境地のようなものを感じる。昨日のたこ満の平松社長で言えば、社員6人のうち5人から退職届を出され、泣きながら家路について耳に入ったのは「おれがおれがの我を捨てて、おかげおかげの下で生きろ」というアドバイスだったと言う。
結局のところ利益は後からついてくるのだ。それは何とあのトヨタ大帝国の豊田社長でさえも言っていた。追及してむりやり出した利益など、長続きなんかしない。ブランドだって最初からブランドを築こうとやってみたってそんなものが簡単に手に入るわけでもない。ブランドなんてヘタすれば2世代、3世代かけて、気が付いたらできていた、というようなものなのかもしれない。やっぱりブランドも「後からついてくる」ものなのだろう。
あらためて優良経営者の説く「3本柱」に立ち返ってみると、そこには生き生きとしてポジティヴな思いが顔からあふれ出している社員の存在に気づかされる。社長は1人だけれども、数百人の社員が「やる気満々」になってくれた会社の総合力と「やる気なし」になってしまった会社の実力には、あまりにも桁違いの差が出てしまう。
そのことを社長自身が骨身にしみてわかっているから、社員の大切さ、ありがたさを片時も忘れることが無い。そんな会社の社員は、なんとか会社のために自分の出来る精一杯で貢献したい、そういう雰囲気が行きわたっている。
やっぱり会社は「社員のためのもの」なんだと思う。会社は社長かお客様か社員か、誰のためのもの?海外であればもうひとつ株主のため、と言うのもあるようだけど、社員が最初でそこから初めてサービスや製品がお客様に届き、その対価としての利益が会社に(社員とそして経営者に)帰ってくる。ましてや株主はその先じゃないか、と今では株を持っていない僕が言うのも説得力のない話です。
あ、そうそう、私も美瑛の小さな宿「四季」という吹けば飛ぶようなお宿の経営者なのでありました。この最後に書くのもお恥ずかしいお話しですが、おかげさまでこれ以上ない、という従業員に恵まれて、お泊り下さるお客様の笑顔に接することの喜びを、今日も享受しております。もうちょっと給料をあげてもバチはあたらないね。
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