で、いつになく、少々真面目なことを書き残しておこうと筆をとった(ってわけないですよね、キーボードに向かった)わけです。谷あり崖ありの9年だったと言えばそれまでなんですが、それでもまだやっている、続いている・・・。見方によっては(かなり無理した見方をしないといけないけど)、成功と言えなくもない・・・かもしれない。それで自分に対して、それから私のような人生の「チェンジ・ライフ」を考える人にとって、僅かでも役立つ(のは無理にしても、決断するための参考になるような)ことを書こうと思います。
【何が準備不足なのか、整理して把握しておこう】
9年前に戻って、自分に会ったら「どうしようもなく準備不足だぞ」と言わずにはおれません。ま、その感覚は、少なからずあった・・・。仮に9年前の自分にそう告げたとしても、さして変り映えのする準備には至らなかったと思う。会社に在籍時は、会社100%と決めていたので(自分に対する綺麗ごとみたいなものでした)、有給休暇も取らなかった。結局自分に何が一番不足していたのかは、開業して間もなく思い知ることになる。
自分の場合は、集客のための準備がまるで出来ていなかった。こと集客について言えば、今だって相変わらずの準備不足には違いない。それでも9年前の状態を思うと、正直背筋が寒くなる。
いろいろな準備へのエネルギーのかけ方は、限りがある中で優先順位をどうするか、よくよく考えないといけない。どんな仕事を始めるにしても、始める前からそんなことがわかるかい?と言うのがホントのところだろう。でも、集客(お仕事の確保)は、いくら準備したって足りている、ということはない。
会社に勤めていれば、自分はごく限られたポジションの中で勝負しているが、それ以外は他部署が担ってくれている。でも、開業したら自分が全部目配せしておかないといけない。中でも毎月決まって徴収されるランニング・コストをどうバランスさせるかについては真剣に詰めておかないとまずい。開業に際して、1・2か月は持ちこたえられるよう準備はするだろう。でも3か月目にはバランスさせるだけの「お仕事」が埋まりそうか・・・?もし怪しければ、最優先でここを何とかしなくちゃいけない。会社勤めのありがたさ、毎月決まった日に振り込まれる給与を「なんと有難い事だったんだ」と気づくのは、会社勤めを辞めてみないとわからない。
ちなみに北海道で宿泊業とか飲食業のようなサービス系で行くなら、冬の集客には要注意だ。夏は大きなパイを前に、駆け出しにだっておこぼれはある。これが秋風が吹く頃には、実力も経験も豊富な先輩たちが、それでもやっとの思いで少ないお客様をかき集めて行く。新参者におこぼれなんてない。「冬の営業どうするか、しっかり考えろー!」と9年前の自分に怒鳴りたい!!!
【経営者は、呆れるほどにカラダが資本】
替えがない。自分のような家族経営の業態でスタートしたら、もう家族には、何が何でも来る日も来る日も健康で馬車馬みたいに頑張ってもらうしかない。自分もしかり。有給休暇なんて夢のまた夢になっちゃう。
B to Bであればまだ話は別だけれども、そんな起業あるいは開業に至る向きにはそもそもこのブログ記事は無用だと思う。あくまで個人が個人にサービスを提供する場合、もう目の前に顧客がいる。多少の不手際は、場合によっては現場力(という危機回避能力、と言えば聞こえはいいが、ある面謝罪力だったりもする)で繋げることはできるが、今日はしんどいから1日、いや半日お休みしよう・・・ということにはならない。
私の場合は宿泊業なので、お客様は当日のためにスケジュールをやりくりし、北海道の少々不便な地に訪れるために、フライトチケットやレンタカーの手配まで準備万端でいらっしゃる。熟慮の末(?)当館にご予約下さったお客様がいらっしゃる当日に「あー、今日は無理。休もう」なんて、どう逆立ちしたってできっこない。
そうは言っても止むに止まれぬ事だって起きてしまう。最悪は同等以上の同業者にお願いする(差額はこちらで持つ)とか方法を考えるケースだってあるとは思うけれども、お客様に与えるダメージ(ひいては自身へのダメージになるわけですが)は、計り知れない。
幸運にも・・・、ホントに運だけだったとしか言いようがないけれども、カミさんともどもどうにか健康で、緊急の非常事態に陥ったことはない(薄氷を踏むようなことはありましたが)。このことはもう少し運に頼ることなく、健康で居続けるような習慣を身に付けないといけない。で、9年前に戻ったら「何でもいいから体を動かして規則正しく暮らしなさいな」くらいは自分に伝えたい。
さらには、早々に事業を軌道に乗せて、繁忙期にも最低限の休日を設定できたら言うことはないのだが・・・、それがそう簡単には行かないから体が資本なんです。
【なりふり構わず、当面は仲間を増やそう】
あの人はちょっと苦手だな、とかなんとなく気が合わないな、とか上手くやってるよなーとか、他人への感情は根拠もなく次々にわいてくる。増してやご近所の同業者様となれば、後発でライバル(には最初はなり得ないのですが)でもあるゆえに、お付き合いさせていただくには敷居が高い。もし上から目線でご指導でも受けようものなら、それでなくても不安でいっぱいなのに、泣き出してしまっても不思議はない・・・。
のではありますが、開業を前にこちらには経験値と言うものがない。どんなトラブルが待っているか、ほぼわかっていないわけだし、わかっていそうなことに対しても的確な対応が出来るだけの知識も技術もない。こんな時、ご近所の先輩ほど頼りになる存在は無い。気が合わない・・・なんて言ってる場合じゃない。白を黒と言ってでも(は、ちと言い過ぎかな)お付き合いさせていただいて、ピンチの時に相談に乗ってもらえるくらいの間柄にはなっておくべきだろう。私の失敗からは
・アレルギーへの対応。
・ダブルブッキングでお客様を受けてしまった。
・お客様に、けがや病気が・・・。
などなど、書き出せばきりなく出てくる。仮にこちらに落ち度がなくたって、お客様がお持ちいただくべきものをうっかり忘れて来る場合だっていくらでもある。今となっては微笑ましい想い出だけれども、現金(日本円)のみ、の当方に対して、カードと香港ドルしか持っていらっしゃらないお客様もいましたねー。
とにかく知らないことを始めてみれば、思いもよらない出来事はいくらでも重なる。そんな時、誰かに(それが複数あった方がいいのは言うまでもない)相談できる、というポジションは是が非でも確立しておきたい。仮に自分でどうにか収拾できたとしても、万一の時には相談できる立場にある、という気持ちは、絶対に持っているべきだ。9年前にここ美瑛にやって来た自分へ向けて伝えるとしたら「ごちゃごちゃ言わずに、さっさと挨拶に行って来い」かな。
【愚直な生真面目さは、報われるケースが多い】
自分自身はほとんどできていないことを書くのもおこがましいけれども、良かれと思って手間ひま惜しまずやったことは、思いのほかお客様には届いている(気づいていただいている)ケースが多い。それは案外ウケを狙ってやったことではなくて、自分のこだわりだったり、面倒だけどやらないと気が済まない何かだったりする。例えば清潔感あるたたずまい、みたいなものはある面限りがないし、手をかければ果てしない。でも、これだけは絶対やっておこう、と言ういくつかの積み重ねは、間違いなくお客様の好感度へとつながって行く。
ネット社会と言われて久しいし、お客様総てが評論家時代の今日、お客様がネットで発信するあれこれは、都合が悪いことだって食い止めようがない。むしろ逆に少しでもいいところを感じていただいて、「いい旅、いい想い出」づくりに少しでもお力になる・・・そんな姿勢でいいんだと思う。
会社にいる時、お客様がPR役を担ってくれるとは何度も聞いたセリフだが、身をもって知ることになるのは遥かに今の方が臨場感がある。「また来ました」はやっぱり嬉しいし「あの人に薦められてきました」もありがたい。誰それのブログで見て、友人のFacebookで知って、どこそこの口コミ読んで・・・。カタチは違うけれども、それは皆広告費を伴わないネット情報ばかりだ。広告費がくっついてないから、書き手は思いのたけを語る。つまりそれは信用に足る情報となって、ネットの中を駆け回る。もちろん悪い情報だって駆け回る。あそこはやめた方がいいよ、ひどいよ・・・。
いいにしろ悪いにしろ、お客様の発信する情報で、提供するサービスは丸裸にされてしまう。裸にされた時、ヤバいなんてことになるんじゃなくて、「良かった」、「また行きたい」が並ぶようなことに、きっと生真面目なこだわりは繋がって行く。
なので最後に9年前の自分へ、そしてこれから新しい「開業」という扉を開けようとしている方へ贈る言葉は「真面目にやりなさい」です。
なんだかかなり自信満々で上から目線で書いてしまったけれども(何しろ9年前の自分が読者と想定したので)、今だって足元がおぼつかないのは変わりない。また、お力があるのにも関わらず廃業された同業者さんを知る身として、まさに運だけはあったんだな、と思うこの頃だ。
もしその運を活かすことが出来た何かがあったとしたら、いろいろなことへの感謝の気持ちが芽生えたからだと思う。来てくださるお客様、一緒に労苦を惜しまず働いてくれるスタッフ、この広大な大地を相手に早朝から夜まで働いて美味しい野菜を供給下さる農家、途中下車した自分を心配して、9年たった今でもお付き合いのあるもと勤めていた会社の方々、そしてご近所さんや同業者さん、仕入先さん・・・。どうぞこれからも、変らずによろしくお付き合いください。
長文・駄文失礼いたしました!
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