2月7日に、ヴェロニカさん(仮名です)が美瑛駅に午後2時過ぎに着くのでお迎えをと連絡が入りました。2時過ぎはチェック・イン的には早いので「3時まで待っててね」と返事を返したところ、ほどなく返信があり、4時6分になりますと1本遅い列車への変更のメールが来ました。
時間通りに迎えに行くも空振りして会えず、戻ってチェックするとまた返信があって諸事情あって5時4分(また1本遅いJR)で来るとの事。もうちょっと早く言ってよ・・・と思いながら、2人でいらっしゃるお客様を再度お迎えに行きました。
実のところ、この時間帯のお迎えはタイトでできればお受けしたくないのです。夕食の準備(ダイニングのセッティングや、もちろん調理や)に追われる時間帯なので、駅往復はスムーズに行けば20分ですが、今回みたいに行ったり来たりでほかのお客様のお迎えやお部屋へのご案内やを考えると、正直忙しいのです・・・。
さて、2度目のお迎えでJR美瑛駅まで行ったものの、僕のお客様のお2人にはまたも会えず帰宅。すると「美瑛駅で待っています」とメッセージが入り、あれれ・・・?と思いながら3回目のお迎えとなった。
そもそも美瑛駅は小さな駅で改札は1か所しかないので、まず見失うとか会えないとかの心配はいらないのですが、見落としたのだろうか・・・?少し時間に追われながら、でも待たせちゃって悪いな、と思いながら再再度美瑛駅で2人を探すもやっぱり見つけられない。もしやしてバスか・・・?バス停??とも思ったけど、到着の時間はJRのダイヤそのものだったしなぁ。また帰るしかないのか、と歩き出す私に、先ほどから私の不審な行動に目を向けるひとりきりの娘さんが声をかけてくる。
Are you “Shiki” owner?
と。そうだと答えると、安堵した表情にちょっぴり笑顔が加わった。にしても
My guests are 2 persons….why?
と聞き返すと、途端に彼女の表情は曇り、大粒の涙が瞳から頬を伝って零れ落ちた。しまった、駅と言う公共の場で、そして公衆の面前で、若い女性を泣かす私・・・。あー、あってはならない光景だ。
涙と言うのは多くの情報を与えてくれる。たぶん、彼女は旭川でひと悶着あったのだろう。一緒に来るはずの彼(旦那かどうかは不明だが、たぶん現時点では「彼」なのではないか)と意見が食い違い、1人きりで来ることになったのだ。当然お部屋は2人用にセットしてあるし、食事だって2人分の準備をしてある。できれば事前に教えて欲しかったなぁと一瞬思ったが、彼女の背中をポンと叩いて私の車を指して歩き出した。
Let us go to my home.
彼女の小ぶりなスーツケースを持ちながら「my home」が妥当かどうかわからないけど、とにかくクルマへ誘った。無言で頷いて歩き出す彼女を当館にお招きできたのは、6時近くなってからのことでした。
結局のところ彼女は傷心(?)にもかかわらず、次第に笑顔が戻って夕食を平らげ、翌朝の朝食も綺麗に食べて、美瑛のSight seeingに元気に参加した。再三の遅延連絡ののちに予約した2人ではなく1人きりでやってきた彼女に、わずかばかりの文句を言いたい自分がいないわけじゃなかったけれども、美味しそうに食事を食べる様子や、嬉々として美瑛の丘を見渡すお客様を見ていたら、ちょっぴり自分も嬉しくなった。
ご案内した美瑛神社で、私から受け取った5円玉を賽銭箱に入れて真剣に何かを祈る彼女のその後が、ハッピー・エンドであって欲しいと願わずにはいられなかった。いつもは自分もお祈りして、わがままなことをいっぱいお願いしていたけれども、この日ばかりは彼女のことだけしか祈ることができなかった。
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